私の師匠である石津謙介氏の経営する会社(VAN JACKET)に売り込みに来るセールスマン(工場や生地の取引先)に対し、会社として考えているクラス(テースト/品位)に応じた服装をしない人達との取引は遠慮願った。

当時、少々行き過ぎると思ったが、やがてその噂が伝播し、VANに行くには、先ず身だしなみからということが、どれほど業界に強い影響力を持ったか計り知れない。
およそ、ファッション業界やライフスタイルビジネスを謳う会社で働く者は、それが人々に新しい快適な生活の在り方や夢を与える仕事をしているわけであるから、従事している人々が率先して自ら他人に好印象を与えるべく、自分の生活スタイルや服装を考えなければならない。
会社のトップに居る方々やそこに働く人達は、社風を販売するような企業文化が求められている。

私達日本人は、戦後復興の過程で、安く高性能でそれを効率的に早く正確に作ることで、驚異的な尊敬を集め、made in Japan というBRANDを確立したのですが、それは、勤勉と忍耐と高度な教育、持ち前の器用さで支えられました。
それらのファクターは、日本を手本に学ぶ発展途上国によっても実現可能な要素であったのです。達成したクオリティーに加え、さらに文化性のある情緒を刺激するものでの進化が必要なのです。

生活のクオリティーから生まれる文化的、情緒豊かな内面から滲み出て来る…数値によって推し量ることの出来ないもの、その文化性豊かなものに、自分の将来の夢に描くライフスタイルと重ね合わせることが出来るようなモノを生み出していける、そんな仕事をするために、先ず自分の服装、スタイルの検証を始めようではありませんか。
メンズスーツを作業服として着用するのか、長い伝統とクラフトマン(職工)としての誇りに裏打ちされた、作り手の意志や願いが伝わってくるような服を一点でも身につけ、そのエネルギーに助けられ、身の引き締まる瞬間のパワーを発揮する、そんな仕事をする自分を想像してみて下さい。