残念ながら、今の日本は安い事がファッションになっている。
経済苦境を乗り越える為、生活防衛する為にはまず安い物を買う。
それはそれとして認める事は出来るのだか限りなく安いもの(すなわち時間と労力をかけていないか、流通の段階で理由ありの商品)に行きついてしまう。
このような商品の安さにビックリはするけれど、果たして感動するのでしょうか?

少なくとも人生は新たな感動を求めることがなくなったら、未来は暗いものになってしまう。
安い物が当たり前という無感覚になってしまうと、良い物についても同様の反応をしてしまう。
本当に良い物には作り手の思い、長い時間と労力があってはじめて生まれてくるものであるから、これら本当の良い物に無感動になってくるという事は、努力とか夢とか希望とか、前向きの総べての行為を評価しない、恐ろしい世の中になってしまう。
夢や希望や、感動を呼び起こすには、私達はさらなる上質なシャツを創り上げなければならない。
この一年はこれらの課題に取り組み、出来る事は即実施した一年であった。

更なる上質は次の様な要件を満たすものと再定義した。
下記の通りであります。

【上質の条件】

1.素材が限りなく良い事
美味しい料理には、何よりも素材の良さが求められます。
シャツで80番双糸(経緯とも)以上が高級シャツ地の条件ですが、私達は更に新疆綿で100番、120番も4900円で販売します。

2.設計パターンが優れている事
人体に添う様に設計されます。曲線の多い人体です。
その困難な事は想像できると思います。熟練と経験と才能が要求されます。
私達は一級のパターン技術者と仕事しています。

3.縫製が良い事
パターンは平面図です。これから立体の服を作るのです。
縫製は丁寧に生地に癖をつけ、縮縫い(イセコム)しながら平面の生地を立体にする技が必要です。
経験と熟練、高度な技を要求されます。
この技(力)と時間をかけて縫い上げます。この力×時間が仕事です。
それだけ質の高い物が生まれます。
経験の少ない人の仕事に較べ、格段の違いが生まれます。
熟練の縫製者は、素晴らしい上質の素材を手にする時、武者震いと緊張、良いシャツを作るんだという一心入魂につながります。
良い素材が良い縫製を誘発するのです。
(大量生産でひたすら直線縫いをする製品との歴然たる差があるのです。)

4.最後に
販売の技術です。どんな優れた商品でも満足と笑顔なしではお客様に手渡りません。
私達のお客様のイメージは心ざしのある礼節を知る、自己実現を目指す人達です。
社会的場面でリーダーを目指す人々で国際社会で堂々と活躍できる人達です。
自分の質を高めなければ、その様な方々に心良いサービスの提供は出来ません。
自分のレベル以上の顧客は生まれない、という厳しい言葉もあるのですが、上質の最終の締めくくりがこの接客に掛かっています。
お客様を思う心の最後の表現者が販売なのです。

真の小売業とは、この一連の工程をさらに深く追求して行く事であります。
素材から販売までが調和し、協業にてその総和が顧客の創造につながります。

このように私達はさらに厳しい自己規律に日々挑戦し続ける社風の確立に研鑽を重ねて参ります。
リーマンショックは私達に新しい挑戦の機会を与えてくれました。