鎌倉シャツを立ち上げたときに考えた事。

小さなコンビニの2階で店を始めた、当然売れないのは当たり前である。
しかし誰か一人でも買ってくれたら、その方はきっと自慢するだろう。
百貨店や専門店で買えば、恐らく12,000円から15,000円するであろう商品を4,900円で販売するのだから。
お買い得で誰かに自慢したくなる、と考えた。
勿論自分でも欲しくなる値段と商品のグレードである。
美味しくて安いお店は、どんな裏筋の狭い店でもお客は訪ねて行くものであることは、食いしん坊の私にはわかっていた。
コンビニの2階でも、必ず商品を判っている人は訪ねてくる、買ってくださる。
1人が2人になる、2人が4人になり、8人になり、16人に32人、64人、128人、256人、このようにいつの日か大勢のお客様で溢れるお店になるだろう。

お金がないから、宣伝費はない、お客様に喜ばれる事が大切で、宣伝費があるのならば、そのお金を使ってもっと良いシャツを作ろう、そのほうがお客様にとって有り難い事にちがいないからだ。
売り上げを幾らにしようか?どれだけ売れば良いのか?しかし目標を決めても、それを実現する方法は見つからない。
さればどうするか?出来ることは 親切に正直に笑顔で心からおもてなしが出来る事だ。
その心がお客様に伝わり、ファンが生まれ、お客様の数を増やす事になる。
これならば誰でもやろうと思えば出来る、売り上げを上げる手段は見つからないが、お客の数を1日1人増やすことができれば、その店は大勢のお客様に恵まれる日が、必ずやってくる。

サービスは大企業も小さなお店でも、平等に行使できる。
大企業のサービスが絶対に強いという事はない、皆平等だ。
雑誌「Hanako」に掲載という幸運もあったが、基本的にはこのようにして、お客様を創りあげたのでした。

4,900円の値段はこの品質でこの値段はお客様が驚いて顎が外れる値段であった。
買わなければ損をする、そんな気持ちになってしまう、品質と価格設定をした。
値段は仕入れ価格とは関係はない、その値段がお客様に納得していただけるかどうかだ。
値段は小売業の責任で決定権を持たねばならない。
シャツを創るためにかかる費用は、一店舗の力では所詮他の大手の会社の資金力に勝てる訳もない。
だからと言って、私たちには力がありません、仕入値段が高いのですから、これに自分の利益を上乗せした金額で販売したとして、お客様が可愛そうだからと言って高い価格を認めてくれるだろうか?
これは絶対にありえない。
お客様にとっては、その店が幾らで仕入れているかなどは、関係がないのである。
お客様は単純に値段に反応するのです。

自分にもっと力があればもっと割安な仕入れが出来る、と思ったがそれは、望むべくもないのでした。
お客様が買って下さらなければ、シャツは売れない、当たり前である。
自分の力のなさをお客様に負担して貰うなど、できないのだから、利益がでなくてもお客様が喜んで買って下さることが重要で、買って下さる顧客の増加が、やがてお客様から、利益の一部を戴ける日が来ると考え、頑張ることしか、当時の私たちにはありませんでした。
真の商人になって見せる、その理想を掲げ正しい商取引、買い手が何時も有利という、売り手を苛める、そんな業界の悪しき習慣を経験して、私こそはと創業当時決意したのです。