シャーロック・ホームズのおかげですっかり有名になったディアストーカーだが、帽子にしては妙な名前だ。

英和辞典をのぞいてみよう。
ストーカーは「こっそり(獲物・人の)跡をつける。…に忍び寄る」で、ディアストーカーは「(こっそり忍び寄ってしとめる)シカ猟師」。ストーカーというと、今ではシカではなく人間に対して行われるストーカー行為を指すようになった。困ったものだ。

そして、ディアストーカーには「古風な鳥打帽」の訳がある。本来はシカ猟の時にかぶるハンティング・キャップ(鳥打帽)の一種だったのだろう。わざわざ「古風な」としてあるところを見ると、この帽子は多分19世紀で終わりを告げた、オールドファッションだったのだ。

古臭いカタチが面白くて愛用するマニアックな一部ファン以外、この帽子をかぶる人はあまりいない。だが、同時代のシルクハットはいまもなお生きている、限られた礼装用として。

(つづく)

170127