それは1957年のことだ。一大決心をしてギンガム・チェックを2ヤール(ヤード=約0.9メートル)買った、シャツをつくるためだ。

長沢セツ・スタイル画教室へ通い始め、兄弟子の穂積和夫さんに出会う。彼はすでに「アイビー」を知っていた。色々話をするうちに、「アイビーのシャツはボタンダウンらしい」と教えられた。当時、東京都内のどこを探してもボタンダウンなど売っていなかった。よし、生地を買ってシャツ店で仕立ててもらおう、アイデアは良かった。

黒と白のギンガム・チェックは小柄を選び、家の近くにある「Yシャツ御仕立」の店に持ち込み「ボタンダウン」を依頼した。シャツ店のおやじは分かった顔をして引き受けた。

結果は口にしたくない。襟の先に小さなボタンが付いただけのシャツだった。何も知らないで、得意になって着て回った。

わが恥ずかしのギンガム・チェックの思い出である。

(おわり)