英国製ダッフル・コートを着込み、意気揚々北スコットランド・インバネス空港に降り立った。

猛吹雪を覚悟していたというのに気が抜けた。その年のスコットランドは暖冬。土地の人たちもこんな冬は珍しいと口々に言っていた。「日本の方がよほど寒い」と言っても「日本より寒いと言いたいのだろう」などと相手にしてくれない。

おかげでスコットランド取材は同時期の東京より暖かい中で順調に進んだ。あこがれのネス湖へも行けたし、言うことなし。

スコットランド首都エディンバラも好天。勝手なものでこんな重い(約2キロ)ダッフルなど買わなきゃよかったと、罰当たりなことを口にしながら無事帰国。英国旅行中ダッフルを見たのは2回、それも若者ではなく年寄りだった。日本では1970年代後半、大学受験生用男女共通のお受験服。ネイビーのダッフル・コートはスクール・ユニフォームと化した。

(おわり)