1年に数回しか行かなくなった銀座。1回は決まっている。年末、次の年の手帳を買いに2丁目にある文具店「I」へ行く。Iでなくとも買えるのだが、なぜか手帳はIで「なくてはならない」のだ。

わたしの性格は、1度これと決めたら頑固に守り続けるところ。現在の手帳は、30年ぐらい使い続けている。といって特別なものではない。縦115ミリ、横70ミリ、黒い表紙のどこにでもあるごくごく普通のデザイン、というか、昔ながらの手帳。

若い編集者に「紙の手帳ですか」と、びっくりされ、こっちがびっくりした。手帳とは、紙で出来たものと信じて疑わなかったが、いまや紙は珍しい存在なのを教えてもらった。

紙製手帳に差してある小さな鉛筆でスケジュールを書き込む習慣が付いている。違うメーカーの手帳、ボールペンなどでは安心できない、落ち着かない。

精神安定剤の手帳だから、銀座のIで買わなくてはならないのである。

(つづく)