哲兵 振り返ればこの20年、レギュラーカラーからワイドカラーへ移行していて、クラシコイタリアブームがありましたね。最近では襟の開きの大きいフルワイドカラーも主力になっています。僕も年に数回イタリアに行く中で、ピッティではもちろん、その他のメーカーと商談をしながらその変化を感じてきました。

宮澤 近年ではスタイルのカジュアル化で、フルワイドなど開いた襟型の傾向は強まってきていますよね。

哲兵 カジュアルウェアは、襟・素材で新しいものがどんどん生まれていくのに、ドレスシャツはなにか次の気分みたいなものを、イタリア・ピッティでも東京でも誰も見いだす事ができないシーズンが続いていたように思います。

宮澤 僕としては、哲兵さんとイタリアに行ったり、東京のマーケットを一緒に見たり、会話をしながら各都市のマーケットを巡る中で新しいシャツの形が浮かびまして・・・2ヶ月以上に渡りそのシャツイメージをパターン・技術・仕様に落とし込む作業をしてきました。例えば、襟足。どん!と高い位置から襟羽根が下りてくるような・・・

哲兵 どん!と高い位置って(苦笑)

宮澤 セミワイドの襟足に色々なネクタイを合わせたり、もちろん芯地のテストも行いまして、妥協することなくきっちりしたものを探す作業を繰り返しました。ソフトな芯地で襟裏のカラーステイを無しにしてみようとか、カジュアルスタイルへの落とし込みも考えましたが、ここはやはり、王道のドレスシャツを目指しました。

哲兵 襟やカフスの飾りステッチも従来のシャツより1mm細くして、すっきりエレガントに仕上がりました。

宮澤 中に入る縫い代とベースのステッチである地縫いを、繊細な飾りステッチよりも更に細かくして、襟やカフスのエッジを立てながら絶妙なソフト感を表現してみました。また前立ても、従来だと表前立てと言ってしっかりとした前立てを採用するのですが、すっきりシンプルな裏前立てにしたんです。

哲兵 ボタンも従来品とは変えて高級感のある4mm厚の高瀬貝ボタンを採用しました。ボタンが厚くなることで、ナポリらしさが出てくるのだけど、今回のシャツは襟の角度とか、醸し出す雰囲気がブリティッシュなのが良い!皆様に(夏のノータイスタイルから)久しぶりのタイドアップを楽しんでいただけるように、また、新たなチャレンジができるような全く新しいシャツになったのではないかと思います。こだわりすぎて、ボタン代が跳ね上っちゃいましたけど・・・(笑)

宮澤 襟足があまり重たくならないよう、第一ボタンには小さめの9mmボタンをつけることによって、更に色々なネクタイと合わせられるような密かな作戦も考えていましたよね。

哲兵 サブネームにつけた思いは『コンテンポラリー』。つまり「現代的(なシャツ)」ですが、トラディショナルなものの枠から、今の時代の“気分”を表現した半歩先のお洒落なビジネスシーンを感じていただきたい!というレーベルになっています。

宮澤 襟羽根や襟足のパターンや縫製のポイントに、色々とその“気分”を細部に至るまで色々と理論的・技術的そして絶妙に変更していまして。その事もご説明したいのですが・・・さすがに企業秘密にして、皆様にはうんちくうんぬんとかではなく、その“気分”を味わっていただきたいです・・・(笑)

哲兵 いや~細かいね(苦笑)

宮澤 また、現在、シャツ全体のスタイルについても根本的なところから細部に至るまで研究しています。それはComing soonなんですが。その前のジャブと言うか・・・テストマーケティング的なひとつのスタイルとして、コンテンポラリーを着用する皆様からの感想をお聞きしていきたい!

哲兵 僕はずっとネクタイバイヤーをやってきたんですが、このシャツだからなのか、久しぶりにコーディネートのイメージがピッタリきました。自然とスーツを着たくなるし、ネクタイもプリントタイなど、色々とイメージが膨らみますね。個人的にはヴィンテージっぽいネクタイや、50オンスネクタイなんかと合わせたいです。やっぱり、本当に今の“気分”を具現化した襟型・雰囲気だと思うんです。“半歩だけ先”の雰囲気なので『コンテンポラリー』!

宮澤 普段はジャケパンスタイルが多いけれど、久しぶりに、きちんとスーツを着て「出来る男」として仕事をして、女性にもてて(笑)、海外のシーンで活躍していくみたいな・・・今後も皆様の反応を見ながら『コンテンポラリー』=つまり今の“気分”を、もちろんトラディショナルに基づいた様々なスタイルや襟型などでインキュベーション企画をしていきたいですね。

哲兵 もちろん、ワイド・フルワイドも相変わらず時代の気分ド真ん中ですが、今回の襟はワードローブに絶対欲しい襟型ですよね。

宮澤 今回は襟の開きの角度によって、圧倒的な違いというか、上品な目新しさを表現したかったんです。また、素材も、海外出張などのシチュエーションも考えた機能的な素材やスタイルも、鎌倉シャツならではのトラディショナルなコンセプトに基づいた上で、色々と提案できたらいいなぁ。なんて考えると・・・今後も哲兵さんと作り込んでいくとこが楽しみですよ!

哲兵 いや、宮澤さんの細部にいたるまでのプロフェッショナルなこだわりが半端ないんで(笑)。僕はお客様の“半歩先”を常に見つけながら、相談させていただきたいと思っています。皆様、今後もご期待ください!

用語解説

クラシコイタリアブーム
イタリアの伝統的ファクトリーブランドのブーム。ドゥエボットーニやフルワイドのシャツが流行ったのもこの流れから・・・

フルワイドカラー
レギュラーカラーより広いワイドカラー。そのワイドより更に広い襟型。その開きの角度は180度とほぼ水平

イタリア・ピッティ
年2回、イタリア・フィレンツェで開催される世界規模のメンズウェア展示会。世界中のファッショニスタやバイヤーが集結し、お洒落度を競い合う場でもある

襟足
台襟とも呼ばれる、襟の土台にあたる帯状のパーツ。直接首に触れる部分

襟羽根
ヂャケット着用時のVゾーンにおけるドレスシャツの部分。ネクタイとの合わせも重要!

芯地
襟・カフスのなど、生地の内側に入れる補強の布。鎌倉シャツはもちろん接着剤を使わないフラシ芯

カラーステイ
襟羽の裏側につける細長い補形付属品。洗濯やクリーニングの際によくいなくなるヤツ(お願い:お洗濯前に必ず抜いてください・・・)

王道のドレスシャツ
洗いなどをかけたドレスカジュアルに対し、ビジネスで戦うためのドレスシャツ)

飾りステッチ
襟羽根・カフスの表から見えるシンボル的ステッチ。なくても成立はするが見た目や補強の為に入れる

すっきりエレガント
色ボタンや色糸ボタン付けなど小手先技の不要な装飾がない、シンプルで上質な見た目

エッジ
襟羽根やカフスの端から飾りステッチまでのキワ。ぷっくりしている方が高級に見えます

絶妙なソフト感
フラットな工業製品ではなく、ハンドメイドのぬくもりがある柔らかい感じ

シンプルな裏前立て
前身頃の中心にある棒状のパーツとステッチをなくしてすっきり⇔表前立て

4mm厚の高瀬貝ボタンを採用
通常2mm以下の厚さのボタンを使うが、コンテンポラリーは倍の4mmを採用。もちろん天然貝!

ナポリらしさ
南イタリア・ナポリにおける、手仕事を駆使した伝統的なスタイル。鎌倉シャツではCasual134の得意分野

醸し出す雰囲気がブリティッシュ
英国調のドレススタイルのキーワード。⇔クラシコイタリア的な

タイドアップ
ビジネスシーンにおいてネクタイは必須。色の組み合わせなどジェントルマンのたしなみ。(使用例:取引先に行く前にちゃんとタイドアップしなさい!)

ボタン代
貝の中でも最も希少な部位を使用するため、ボタン代が通常の貝ボタンの3倍に・・・!

第一ボタンには小さめの9mmボタン
通常は10mmの第一ボタン。1mmの為にミシンの設定も変えて手間をかけます。この手間が着心地に直結

サブネームにつけた思いは『コンテンポラリー』/半歩先のお洒落
良質で世界基準のステープル(中心的なもの)・ハイコモディティ(ベーシックをアップグレードしたもの)の中で半歩だけ前に飛び出したコレクション

その“気分”を味わっていただきたい
今という時代の、少し先の“旬”を一緒に感じましょう!

ヴィンテージっぽいネクタイ
昔風のテイストを現代風にアレンジしたディテールのネクタイ。マーケットにおいて最も注目されている

50オンスネクタイ
デビッド・エバンスのシルクプリント生地を使用。年間5,000本を売り上げる鎌倉シャツのベストセラー。永久定番といえるネクタイ
商品一覧へ >

ジャケパンスタイル
スーツより少しくだけたビジネススタイル。ジャケットやパンツを違う色や違う生地で合わせる装い

インキュベーション企画
温めて、研究して、お客様と共に新しいものを生み出すプロジェクト・・・にしたい!

ワードローブ
洋服ダンス(笑)。そこから派生し、その人のコーディネートを完成させる洋服やアイテムまでを指す

襟の開きの角度
「色」の表現に対して、Vゾーンの表現で重要な「形状」による表現

プロフェッショナルなこだわり
着心地や見え方など感じることには全て、パターン縫製理論や細部設計が潜んでいます。ただの技術者ではなく、その“気分”を身体で理解して設計できる人物(宮澤)ならではの目に見えない工夫の数々