私がメンズファッションの基礎知識で強調したいのは、この洋装着用技術が国際社会で活躍する場合、私達日本人の想像を越える重要性を持っているからである。

私の体験など取るに足らないものではあるが、幸いにも紳士服飾アパレルとして一世を風靡したVAN JACKETに就職し、 社長であった石津謙介先生から欧米社会に接して行く時の「何時、何処で何を着ていくか」(このタイトルで出版もされている)初対面の最小限のマナーとして教わることが出来、何年か後にニューヨークで米国ブランドライセンス取得交渉の折、 進展しない状況の中で、先方の社長から二人でと夕食を誘われ、「仲介の日本人の服装がどうしても納得出来ないでいたが、君の服装を見て、私の服作りやファッションに関する自分の哲学が理解してもらえるのではと直感した。
君が本当に責任者としてやるならライセンスを与えよう」こうして長く続いた交渉は、私が現れてその晩に決着したのであった。

仲介の人にはこのことは申し上げることも出来なかったが、 その後、欧米の方々との交渉時にも何時も服装の第一印象が交渉を有利に導けたことは石津先生のお陰であり、感謝は深くなる一方でした。
私は益々清潔で礼儀正しく、さらに国際社会における服装着用に気配りするようになったのです。

今、フランスの著名なネクタイメーカーとの輸入提携をすすめていますが、やはり私達のスタッフ数名が交渉の場に臨んだ時、 先方の社長がその服飾を見て、驚嘆感銘し、言葉を交わす間もなく交渉の進展がなされたことは紛れもない最近の事実としてお伝えしたいのです。

2002年9月からはこのフランスネクタイメーカーとの共同企画のネクタイがメイドインフランスで販売される予定であります。
このフランスのネクタイメーカーが110年の歴史を持ち、何故英国のブリティッシュテイストのタイを造り続けているのか、あの英国嫌いのフランス人がと思うのでありますが、フランス人男性といえども紳士服は英国に学ぶ、まさに英国におけるジェントルマン道が世界の基準であることの証明のようにも思えます。
そのルーツは次回に譲ることにいたします。