2012年は私どもにとりましては生涯忘れらない年となりました。
10月30日、小さな企業でありながら恐れ多くも念願のニューヨークマンハッタンに出店することができました。
出店すると決断しましてもその後、たくさんの困難が控えておりましてこれを弊社の社員たちが、一つ一つ克服しての出店でした。
ハリケーンサンディにも見舞われた10月30日の早朝7:00、さあ、開店と入り口のドアを開けました時、涙が溢れました。
ツーリストとしては何度もニューヨーク訪問をしておりましたが、ここで商売をするなど夢の又夢と思っていましたので感無量でした。
そして2012年11月7日、弊社創業20年目のアニヴァーサリーをこのニューヨークで迎えました。
思えば20年前、鎌倉の自宅近くのファミリーマート2Fでシャツを売り始めたとき、何を考えていたかといいますと、
今日は、お客様いらして下さるかしら?と、ただそれだけでした。

準備期間と開店後合わせて、独りで1カ月間のNY滞在でしたが、この間、たくさんのニューヨーク在住の日本人の方々とお会いしお話しできました。
又、見ず知らずの日本人の方々にも「日本のために頑張ってください」と、励ましの言葉をたくさんいただきました。
本当に有難いと胸がいっぱいになりました。
祖国日本を、そして日本人として、どうあらねばならないか考えさせられた1カ月でありました。
店にいらしてくださるニューヨーカーは私が想像していたアメリカ人ではありませんでした。
私のイメージしていたアメリカ人は、皆、一様に太っていて、失礼ながらあまりお洒落でないという印象でした。
でもニューヨーカーは全く違いました。

マディソン街のKamakura shirts NY店にいらしてくださるニューヨーカーは皆、一様に体を鍛えているらしくスラッとしてそれはお洒落な方ばかりでした。
アメリカ人に対する印象がガラッと変わりました。
投資会社や銀行などの金融、広告などの会社が店のそばにたくさんあり、このあたりのexecutiveが来店してくださるのです。
彼らは上質でお洒落な服装をして、商品を見る目があってしかも気取らない。
本当にステキです。
今、ニューヨークでは「MAD MEN」という60年代中頃の広告マンを主人公にしたドラマが人気で、MAD STYLEが流行っていることを「週刊NY生活」の三浦編集長に教えていただきました。
「奥様は魔女」というテレビドラマが大人気で私も高校生のころよく見ていましたが、ちょうどそのころのMAD MENがモデルとのこと。
えっ、「狂った男性?」、そうではなくIVY スタイルをしたMadison avenue の男性なのだそうです。
ちなみに弊社店舗のお客様は圧倒的にこのMAD MEN です。

私が説明するまでもなく皆さまご存じと思いますが、ここで改めてIVYスタイルを私なりに定義してみます。
英語ではClassical ivy leaguers styleと言いましてアイビーリーグの大学生のスタイルです。(1960’撮影)

このMAD MENはアイビーリーグの卒業生でアメリカ社会のエリートではないかと思われます。
実はこの写真50年も前の写真です。信じられないくらいすてきですね!

IVYは植物の蔦(つた)と、いう意味ですから蔦のからまった校舎、すなわち伝統ある名門大学生が好んでしたスタイルとでもいいましょうか。
日本でも昔、一高や旧制高校の生徒が好んだ、手ぬぐいを腰にぶらさげたり、マントを羽織ったバンカラスタイルがありましたものね。

典型的なスタイルはもちろんボタンダウンシャツですが、紺ブレ、ローファー、ヨットパーカー、トレーナー、そして膝丈まであるバーミューダパンツ、レジメンタルタイと色々あります。
ちなみに私は10代のころ、海に出かけるときはブラックウオッチのバーミューダパンツを好んではきました。
ただ彼らの基本スタイルはベーシック、上品です。
そしてそれは今の時代に非常に通じているのでMad Men styleがもてはやされるのかもしれません。
ニューヨークでこれだけアイビースタイルが注目を浴びているのですから、このブームは日本にもきっとやってくることでしょう。
よく街中で若い人がパーカーを着ていますが、私から見ますとこれは典型的アイビースタイルでその昔ヨットパーカーと言ったものです。
日本の大学生や20代の若きビジネスマンにぜひ、アイビースタイルとそれから精神を取りいれていただきたいものです。
アメリカのアイビーリーガー達はスポーツも勉強も励むとか、ハーバード出身のかのケネディが「Study hard. Play hard」いみじくも言ったそうです。

アイビースタイルとはライフスタイルそのものですね。

それでは、このアイビースタイルの男性に寄りそう伴侶や恋人はどのようなスタイルで臨むのがいいのでしょうか?
ボタンダウンシャツ着て女性版アイビースタイルにするのも大学生でしたらとても可愛いですね。
でも、やはり大人の女性にはクラシックスタイルが一番しっくりいくような気がします。
クラシックスタイルの代表といえばケネディ夫人ですね。
彼女はフランス系アメリカ人でソルボンヌ大学に留学したので、そのスタイルはフレンチテイストでそれをベーシックに上手く着こなしていました。
オナシス夫人になってからの上品カジュアルは秀逸でした。
大きなサングラス、スカーフ、ジャッキーバッグと小物遣いがとても上手でした。

私がアイビーを知ったのは10代の頃でした。銀座のみゆき通りを闊歩するみゆき族をメンズクラブで見て何とカッコいいと思ったものでした。
Mad menは60年代ころのストーリーですが、私も1968年に㈱VANジャケットに入社して、そのころの憧れの地、青山3丁目の会社までOLとして鎌倉から通っていました。

KENTブランドを立ち上げ、メンズクラブ「街のアイビーリーガース」の記事を執筆していらしたアイビーの教祖くろすとしゆきさん、美貌の鈴木チーフ(男性です。こんなハンサム見たことありません、部長です)と、同じデスクで緊張?したものでした。

このころ、東大紛争や三島事件があり世の中が騒がしかったのですが、2年半で退社するまでとても楽しい、今、思えば華やかな時期を過ごしたものです
そうそう、アポロ11号が月面着陸してオフィスでみんなで騒いで見ました。

60年代も終わりに近づきベトナム戦争も泥沼化して何となく厭世気分に覆われたのかアメリカでヒッピー族が出現。
ジーンズに長髪で髭スタイルでした。
それで、VAN Jacket の社員でも先端を行っている人はMr.VANという新たなブランドを身につけていました。
このスタイルはどちらかというと長髪、髭がよく合い、爽やかなIVYスタイルとは違い、ヨーロピアンスタイルの細身のジャケットでパンツは思いっきり裾広がりのパンタロン(今でいうブーツカット)でした。
世の中を斜めに見ているようなそんな雰囲気を醸し出していました。
そして日本初ディスコクラブが赤坂に登場して、みんなでよく行ったものです。

伝説の60年代といいますがよい時に青春時代を過ごせたと思っています。
鎌倉や湘南にはお洒落な人がたくさんいて、10代のころからお洒落に興味があったのですが、今、思うと私はVANで服のイロハを学んだのではないかと思います。
パーティやディスコでの派手なスタイル、それに石津謙介社長(当時)の山中湖にある別荘にみんなで出かけるときはカジュアルスタイル、もちろんオフィスではしかりです。

つまり色々な場面があったのです。

服装で大事なこと、それはTPOとサイズ感だと思います。
TPO、つまりその場面に合った服装をすることは礼儀であり、その場面を楽しんでいる、というメッセージではないでしょうか?
ですからなるべく場面を自分で作ってみることをお勧めします。
パーティー、クラブ、大切な人とのディナー、そしてもちろんアウトドアーも・・
想像しただけでも楽しいではありませんか!

そしてサイズは絶対に妥協してはいけないですね。
その人のサイズに合ってない大きいサイズの服を着ている人が殆どです。
女性も男性もこの点がニューヨーカーとの大きな違いです。
ジャストサイズに身を包む、これはまさに服装の基本です。
アイビースタイルはファッションではなくライフスタイルであり生き方そのものです。
「服装」と「スピリット」、この重要な両者がひとつになりアイビースタイルとなるのです。