この時代、シャツにはいまだ綿素材が発見されていないので、もっぱら麻やシルク素材が使用されていて、白地に美しい刺繍などを施した装飾的なものであったと考えられる。

スーツの発達とともに、シャツはその装飾性をはぎ取られ、派手派手したものでなく、シンプルな中にもその品性や粋(イキ)を極める、スーツシステムにあって重要な役割を担うようになったのである。
一見して目立たないが、その感性の持ち主しか理解することが出来ない、控え目でいてその秘めたる個性をほとばしらせるような服装術。
これが粋(イキ)の極限として高く評価されたのである。

やせ我慢の哲学が男のあるべき姿であるダンディズムと昇華し、やがて、 英国の紳士たるべくジェントルマン道として確立して行ったのだ。
男は女性の服装と一線を画する道を選び、その姿が世界基準のスーツスタイルと発展し、そのスタンダードな装い術こそが、国際社会で通用する着用マナーとなったのである。