服飾評論家の肩書も自ら望んだ訳ではない。「MEN’S CLUB」に肩書は付いていない。
よその雑誌から原稿を依頼された時、先方が付けた。それ以外に肩書が見付からなかったからだろう。

日本人は肩書好きだ。初対面の人と名刺交換をすると、ひっくり返して不思議そうな顔をする。
名前と住所しか印刷していないからだ。
ほとんどの人は肩書を見ると安心する。なので、名刺の表から裏までビッシリ役職名を羅列する人もいる。

この世界に入って55年間、肩書なしの人生を送った。
というと、VAN時代はどうだったのだと思うだろう。あの会社は肩書無しの変わったところだった。
ところが取引先も社員も急増したので、名刺に肩書が付くことになった。
さすがVANだ、部長だの課長ではなくチーフ(部長)、ヘッド(課長)、キャップ(係長)と呼んだ。
「kentチーフ」の名刺を頂いた時は照れくさい思いをした。

(つづく)
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