何年前になるか、某社から「男の日傘」について意見を求められたことがあった。

男性用日傘の販売を企画しているとのことだった。「売れないと思う」と答えると、先方はひどくがっかりした様子。「これはいい!売れますよ」と言ってほしかったのだろうが、こんなところでヨイショしてもはじまらない、思ったままを伝えた。

数か月後、日傘を売り出したことを知る。
結果は予想通り。その日傘はそれまでのと違って「UV何%カット」など、機能を全面に押し出していた。だが、残念なことに「機能」は目に見えにくい。男性は「機能」よりも「見た目」を重視するところがある。

日傘を差せば顔周辺の温度が下がることくらい知っている。だが、それだけでは買わない。まだ少数派なので恥ずかしいし、カッコ良くないとの思いが強いからだ。

そこが、大正から昭和にかけて男の日傘がトレンドだった時代との大きな違いだ。

(つづく)