「グレー・フランネル・スーツを着た男」という形容が流行語になったことがある、1950年代前半のアメリカでのことだ。

グレー・フランネル・スーツとは、謙虚な体制順応派ビジネスマンの代名詞になった。56年、グレゴリー・ペック主演「灰色の服を着た男」(邦題)という映画が日本でも上映されたが、わたしは見ていない。ペックは3年前オードリー・ヘプバーンとの「ローマの休日」で人気を得たが、好きな俳優ではなかったので見なかった。いまとなってはどんなスーツだったか見るべきだったと後悔している。

この時のグレーは「オックスフォード・グレー」より一段濃い「チャコール・グレー」だったとは聞いている。オックスフォード・グレーとは、英国のオックスフォード大好みのグレーで、白50%黒50%のグレー。いわばグレーの基となる色調。濃くなると「きつく」、淡くなると「やさしい」印象を相手に与える。

(おわり)

grayflannelsuit