「アイビー族」と呼ばれるおしゃれ軍団は、「みゆき族」とはっきり違った。みゆき族がカジュアル・アイビーとすれば、アイビー族はドレスアップして現れた。

典型的なコーディネートを再現しよう。黒に近いチャコール・グレイのスーツが中心だった。高校生がスーツを着て、ネクタイを締め、ウイングチップ・シューズを履いた。いまでは考えられないことだが、1960年代中頃の「おしゃれ」とは、スーツをおいてほかになかった。

ニューヨークのマディソン・アベニューを行くビジネスマンのような格好を高校生がまねたのだから、アイビーも完全に理解されていなかった。いまでいうカジュアルという服装がまだ珍しく、われわれも含めて暗中模索、手探り状態だった。まして若い世代のおしゃれさんはスーツさえ着ていればおしゃれなんだと信じ込んでいた。

実はわたしもその一人で、本場のアイビーはスーツで決めているものと思い込んでいた。

(つづく)