アンドレ・プレビンという新人ピアニストを知ったのは、1950年代半ば、「マイ・フェア・レディ」というタイトルのLPだった。

当時、輸入LPは3000円ほど、大卒初任給が1万円くらいだから、いかに高価なものだったか分かるだろう。買えないから、ジャズ喫茶という名のジャズLPを大音響で聞かせる喫茶店で、コーヒー1杯で2時間くらいねばるのがごく一般的ジャズファンの姿。

入荷したてのそのLPは、ピンクのジャケットで、大きなつばの帽子をかぶった女性が、ティーカップを持った写真。ドラムス シェリー・マン、ベース リロイ・ビネガー、ピアノ アンドレ・プレビンのトリオ。演奏するのは古いスタンダードではなく、ブロードウェイで公演中のミュージカル「マイ・フェア・レディ」の楽曲を取り上げた。

何て都会的でおしゃれなピアノだろう。軽妙洒脱なプレビンにわたしはとりこになった。

(おわり)