デニムという名の厚地綿織物が米国を代表する「ジーンズ」として定着したのは前回に触れた。

これより以前、英国でワーキング・ウェア素材として確立した生地があった。

ワーキング・ウェアの条件に「丈夫」「安価」そして「機能」などがある。これら厳しいチェックポイントを満たした素材が生き残る。米国は「デニム」、英国では「モールスキン」がそれ。

「MOLESKIN」とは、動物の「モグラの皮」。モグラの皮に似たスベスベした綿織物。丈夫で安いスグレモノだが、日本ではなじみのない素材。一番近いのは「コットン・スエード」だろう。

英国ではワーキング・ウェアといえばモールスキンといわれるほど定着している。19世紀、イングランド北部の陶磁器製品の陶工が好んで身に付けたといわれている。特にパンツが一番人気だったという。丈夫で温かいからだ。

(つづく)