「VAN 〇〇」をいくつか手掛けたが、いずれも命令されてやった新ブランドだった。中で唯一、自分から「やらせてください」と申し出たものがある。「VAN REGAL」だ。

実は、履く靴がなくて困っていた。アメリカの雑誌で見るようなゴツイ靴(後に知ったことだがグッドイヤー・ウエルト式)が市場になく(1960年ごろ)――いや、あったのだろうが気付かなかった――。IVYにマッチする靴を探しまくっていた。

VANがIVYスーツを発売したのだが、マッチする靴がなくて苦労していることは聞いていた。当時、はやりの靴は、つま先がツンツンに尖ったものばかりだった。VANの服にコーディネート(その頃にこの言葉が現れた)する靴をなんとしても――というよりも自分のためにも――欲しかった。

「靴をやらせてください」と、社長に申し出た。「靴か……」ノリは悪い!

(つづく)


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