以前、 コートやジャケットが重く感じた話 をした。コートが重くなるのと同じく靴の重さが気になる時が来る。それまで感じたことがなかった靴の重量が気になるのだ。

靴の重さを量ったことなどなかったが、実際の目方とは違う体で感じるモノなのだろう。
それを感じたのは何才の時だったか……。好きだった米国製ウィングチップ(内羽根式のフルブローグ)を久しぶりに履いた。それまで感じたことのない違和感がある。きついのとは違う、どこか足にしっくりなじまないいやな雰囲気が。

大して気にもせず歩き出したが、いつものようにスムーズな足さばきとは違う。一日を終え、靴を脱いだ時のことだ、手にしたウィングチップがいつもより重く感じた。

こんなことがほかの靴にも感じるようになったある日、脚にガタが来たのを悟る。悲しい事だが認めぬわけにはいかない。コート、ジャケットそして靴。老いはヒタヒタと忍び寄る。

(つづく)