「世界中の秋晴れをぜんぶ東京へ持って来たような――」。
名文句で始まった東京オリンピック開会式のNHK実況放送。

1964年10月10日(土)の東京は快晴。
前日の夜半まで続いたどしゃ降りがうそのようだった。
雨の開会式はどうなるのだろう、予定通りやるのだろうか、
そんな例が過去にあったかなど、余計な心配はすべて外れた。

10月10日を開会式に選ぶには深い訳があったことを後で知った。
「特異日」と呼ばれる日がある。
この日は雨降りや、快晴になる確率が高い特別な1日なのである。

10月10日は最も晴れが多い特異日のひとつだった。
そして、その予測がものの見事に的中したのだった。

わたしはこの日を国立競技場にほど近い青山で迎えた。
2ヶ月前の8月にVANは日本橋から青山へ引っ越してきたばかりだった。(つづく)