素足で靴を履く行為は、彼ら大学生にとって「反体制」の旗印でもあった。
エスタブリッシュメント(制度)に対するささやかな反抗。

アメリカ取材を終え帰国した1965年夏、好奇心からまねしてみた。
まずローファーで試してみたが、涼しいどころか暑くて痛い。
足がこんなに汗をかくのかと思うほど靴の中がヌルヌルする。
その上、あちこちの指が当たる。履き慣れたローファーがこれほど足に合っていなかったかと思った。

素足での靴は思ったほど楽ではないことを学習するとともに、ソックスの働きを再認識した。
ソックスは足の発汗(1日コップ半杯分も出るという)や、
靴との摩擦を防いでくれている縁の下の力持ちなのを学んだ。

イキがって素足でカッコつけているしゃれ男諸君、無理せず靴下を履きなさい。
素足で気持ちいいのはデッキシューズとスニーカーぐらいなもの。
もっと素足が向いているフットウエアがある、下駄。
浴衣に下駄は素足「でなければならない」のだ。
(おわり)

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