わたしのお目当てはエラ・フィッツジェラルドではなく、オスカー・ピーターソン・トリオだった。

J.A.T.P.の主催者ノーマン・グランツの「オン・ベース、レイ・ブラウン」「オン・ギター、ハーブ・エリス」の紹介で2人がステージに現れた。そして「オン・ピアノ、オスカー・ピーターソン」。割れんばかりの拍手の中を舞台下手から巨体が現れた。

ピアノの前に腰を下し、「ガーン」力強い第一声が日劇中に響き渡った。その時だ、「ズシーン」大きな音と共にピーターソンの巨体が頭から後ろへ倒れ込んだ。いすが体重に耐えかねて折れたのだ。場内は「シーン」となった。

畏れたのはピーターソンが頭へきて帰ってしまうのではないかだった。

何分…いや何十分間不安な時が過ぎた。ところへ新しいいすを片手に、ノッシノッシと大股でピーターソンが現れた。

そんなハプニングの初日だった。

(つづく)