「旅支度」というコトバ自体、昭和のニオイがする。旅行がいまほど日常化されず、「ハレ」の行事だった。まして海外旅行といったらごくひとにぎりの人しか体験することができない時代。

「兼高かおる世界の旅」(1959~90年)が人気テレビ番組になったのは、海外旅行が夢のまた夢だったからだ。兼高さんが何かに書いていた、彼女のカバンはびっくりするくらい小さかったと。

昭和の旅行、それはひと目でベテランとビギナーの区別がついた、持ち物である。旅慣れた人のカバンは小さく、初心者のは大きい。

いま、旅支度といわれた旅のノウハウはない。大きくてしかも楽々引っ張れるキャスター付きケースが出来、あれも、これも、なんでも入れられる。着回しなど考える必要は不要になった。

旅行カバンは、小さければ小さいほどカッコよかった昭和の旅行が、懐かしく思い出される。

(おわり)